医師は全件正診、柔道整復師は全件誤診
医師は全件正診、柔道整復師は全件誤診
 柔道整復師法第十七条に『柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。』と規定されておりますが、それ以外に加療の制約を受けるべき根拠がありません。また、整形外科での『鞭打ち損傷』の加療状況からも判りますように、手術適用のものは当然整形外科の領域で、表題の件には該当しません。この様に手術適用のものを除いた場合、医師医療から柔道整復師医療に変更しても、投薬関係以外に問題とすべき点はありません。それにもかかわらず、交通事故関連の裁判では、医師の同意がない場合には、交通事故傷病者の柔道整復師に対しての施術費用は支払わないとの判例が、主流となっているようですが、これは、柔道整復師に診断権がないとしての見解のようです。
  仮に、A病院のB医師の診断と加療方法に納得のいかない傷病者がいて、C病院のD医師の診断と加療を求めた場合、このD医師は、B医師の診断に基づいた治療しかこの傷病者にできないのかという疑問です。誰が考えても、そんなことは有り得ません。D医師はD医師なりの診断を下し、それに基づいて加療します。(B医師の診断と加療方法を参考にする事は有るでしょうが。)そうでなければこの傷病者は納得のいかない診断と加療方法を、どの医療機関に行っても強いられることになり、当初の診断が誤診だった場合、永久に治らないと言うことになります。場合によっては医師−医師間で診断と加療方法が伝達される場合も有ります。例えば、診断と加療方法に不満はないが、単に傷病者の都合で、近くの医療機関に転院したいなどの場合です。しかし一般的には、先行して受診している医療機関の診断と加療方法に納得できない為に、傷病者は次の医療機関での診断と加療を求める訳です。医師−柔道整復師間でも同様の事態が発生しますが、これが交通事故傷病者には許されないと言うことになっています。
 医師−柔道整復師間でもそうですが、仮に医師−医師間での診断が、前者(当初担当していた医師)から引き継いだ診断であり、後者はただ追随して加療していたのだから、責任問題が発生しても後者は何ら責任の追求はされず、前者のみに全ての責任が有ると言うので有れば了解できますが、一般の医療裁判で、その様な事は認められてはおりません。(各医師の診断に基づいた加療が行なわれているので、当然加療に対しての責任がある訳です。)交通事故傷病者に関してだけが、医師の診断に基づいて柔道整復師が加療するような変則的な取扱いになっております。(医師−医師間ではその様な取扱いにはなっていません。)
 もっと極端な例を上げれば、診断は時々刻々と変化すると言う事です。外科手術の際、いままで動いていた心臓が停止してしまったとした場合、果たしていままで動いていたのだからとしてそのままに放置しておく事は無いでしょう。このままでは死んでしまうとの診断で、一般的には直ちに蘇生術(加療)を施します。この様に診断と加療は表裏一体のものです。いままでどうりの加療など有り得ません。(通常は加療効果によって、傷病者は快方に向かいますので、それなりの加療方法に変更されるのが当たり前です。)まして、他人(医師)任せの診断に基づいた加療など有り得ません。
 医師の発行する診断書に関しても同様で、『全治3週間。』と記載されていても、より短期間に治癒する場合も有り、逆により長期間の加療を必要とする場合も有ります。この様に、医師自身の診断書でさえ加療期間の確定が困難であるにもかかわらず、柔道整復師に対しては安易に医師の診断に基づいて加療しなければならない様な事態は、異様としか言いようがありません。
 別添資料(未掲載)にもありますように、厚生省健康政策局医事課は、柔道整復師の行う業務に係る呼称について『柔道整復の施術の一環として行う業務のうち、医師の判断に対応するものの呼称として「(柔道整復)判断」』に対して『差し支えない。』との回答をしています。
 診断と加療は表裏一体のものですが、柔道整復師に診断権が無いとした場合、従来より健康保険で規定している『骨折』『脱臼』『捻挫』『打撲』の判断(診断)は、誰がどのように判断した結果に基づいて加療しているのか、まったく不可解です。(判断(診断)せずに加療していることになります。)
  更に、当初から整形外科等の医師に受診しないで、柔道整復師の元に加療に来られる交通事故傷病者も居られますが、この場合には、整形外科医等の医師の関与がまったく無いまま、柔道整復師として加療することになりますが、この点でも不都合です。この様に、柔道整復師が、独立して営業している場合は、紛れもなく柔道整復師の判断(診断)に基づいて加療してきたことをも否定するもので、判例が異様であることは、誰の目にも明らかです。
  又、柔道整復師の施術について『骨折・脱臼・捻挫・打撲に至らない状態であるものについて、柔道整復師が、手技等その施術の範囲内の行為を行うことは差し支えないか。』の問いに対して、厚生省健康政策局医事課の回答は、『およそ人の健康に害を及ぼす虞のない行為の範囲で、柔道整復師がその業務の特色を生かした施術を行うことは、差し支えない。』
との回答をしています。
 これらの回答は、従来からの柔道整復師の判断(診断)と業務の範囲に関しての明確な回答で有ると共に、交通事故関連の裁判では、医師の同意がない場合には、交通事故傷病者の柔道整復師に対しての施術費用は支払わないとの判例には多大な疑問があります。























2004.01.11